ムッソリーニと会った人たち
最近読んだ二冊の本の著者が、偶然第二次大戦中のイタリア独裁者であるムッソリーニと会っていたという共通点がありました。そしてそれぞれの本でそれぞれのムッソリーニについての印象が書かれていました。 これらの本は、ムッソリーニと会うことを目的とはしておらず、二人の著者も、ムッソリーニを主題においていません。 ひとつはジャーナリストとしてムッソリーニと会い、もう一つは旅の途中の表敬訪問として会っていました。 ジャーナリズムの一環として会った著者は、Emery Kelenというハンガリー出身の風刺画家です。彼の自叙伝「Peace in Their Time」(1963年)という本に、ムッソリーニと会った思い出が書かれてあります。この本は著者の20世紀初頭の幼年期から、第一次大戦の従軍経験を経て、第二次大戦が終わるまでの体験が書かれています。 その間、ムッソリーニ含め、ヒットラーやガンジーなど当時の多くの政治家と会った経験談が書かれています。そこには1933年の国際連盟を脱退した時の日本外交団も含まれていて、なかなか興味深い本となっています。 もう一つの本は、篠田治策法学博士によって書かれた「欧州御巡業随行記」(1928年)という本です。これは篠田博士が当時、李王職次官という立場で、1927年から1928年まで李垠(リギン-大韓帝国最後の皇太子)がヨーロッパを外遊した時、付き従った記録が記されてあります。 この二つの本の共通点は、ただムッソリーニと会ったことがあるということだけで、それ以外はまったく性格の異なる内容となっています。 Kelenの本は第二次大戦が終わり、ムッソリーニの評価が定まってから書かれたものであるので批判的に書かれているのに対し、篠田博士の本はムッソリーニがイタリアの最高権力についてから5年後という時期に会っているせいか、どちらかというと好意的に評価されています。 篠田博士の評価の仕方も、またムッソリーニのこの日本から来た外遊団に対するふるまい方も政治的な背景があるので、一概には言えないかもしれませんが、ムッソリーニの性格を表していて興味深いです。 まずは風刺画家であるKelenによるムッソリーニの印象について書きたいと思います。
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木鳥 建欠
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