第18回
「『老いの本質とは、』」駅長が言った。「『諦念七〇パーセント、希望三〇パーセントの危うい心の均衡にある。』─影が昨日言ってた。」 「どういう意味だ?」 「知らない。」 「難しいことを言うやつだな。」 「諦めちゃいけないし、希望も持っちゃいけないらしい。」 「誰が?」 「知らない。」 「駅長さん、鳥になって大空を飛ぶのと、魚になって大海原を泳ぐのとどっちが気持ちいいかな?」 「けど、飛べないし泳げないから…。」 「じゃあ飛べて泳げたら?」 「鯨がいいな。」 「でも海は淋しくないか?やっぱり空かな、どっちかというと。それに確率的に鯨は難しいな。鳥ならいっぱいいるけどね。」 坊主は窓の外に顔を向けた。 「空はまぶしすぎる気がする。」 「輪廻があるとするだろう?じゃあ確率的に鯨は難しいよ。数百万頭くらいいだろ?鳥ならまだ何とかなりそうだ。でも人間は何十億もいるらしいからね。」 坊主は困った顔をして駅長を見た。駅長はなるほど、と答えた。
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木鳥 建欠
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