第100回
現在の自分の凋落ぶりを嘆いた王は、その答えを探すように何もないこの部屋を見まわしたとき、あの床に仕掛けられてあるコルクに目がとまった。しかしその考えを振り払うようにすぐに目をそむけると、気分を変えるために樽の水をすくった。水はもう残り少なかった。一日一回両手ですくったとしても三日ももたないだろう。王は急におそろしくなり、すくった水をまた大事そうに樽にもどした。パンは?パンはどうだろう?王は不安にかられて部屋の中をさがしだした。そして部屋の隅に置いてある麻の袋の中をのぞいてみる。枕くらいの大きさのふくろに十個くらい石のようなパンが入っていた。肉体的に衰弱しきっている体に電流を流されたように、王は立ちすくんだ。危機感が王の体を一時的に蘇生させた。それから跳躍するようにテーブルの下に飛び込むと、板をはがし、その裏の隙間に詰め込まれている塩漬けの肉を取り出した。それは王が期待したほどには入っておらず、そして王が期待した以上に上等な肉であった。バカな男め!王はこの細工をした小姓をののしった。イスの下の肉も取り出すと、王は怒りに顔を真っ赤にし、こぶしを振り上げた。これだけの肉でどうやって生きていけというんだ?小姓にとってこれだけの量の肉を買うには、一年分にも匹敵する給料が必要だったことを王は知らなかった。チクショウめ!あの役立たず!ひとしきり怒るとやせ細った体の気力はすぐに萎え、寝床に横たわった。体力がいちじるしく衰えていたのだった。たまらないくらいのさみしさを王は感じた。そしてまた床に備えられたあのコルクを、そっと盗み見た。
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木鳥 建欠
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